2018年3月21日に開催いたしました、当社の2017年12月期定時株主総会(以下、株主総会)にてオアシス・インベストメンツⅡ・マスター・ファンド・リミテッド(以下、オアシス-Oasis Management社)より、2018年1月16日付で受領した株主提案に対する当社取締役会意見について以下のとおり説明申し上げました。なお、株主総会「招集ご通知 株主総会参考書類」には、オアシス-Oasis Management社の提案の内容、ならびに当社取締役会の意見を詳細に記載しております。
1. 株主総会において熊谷が説明した資料とスピーチ内容
オアシス-Oasis Management様の株主提案について、当社取締役会の考え方をご説明させていただきます。
まず、大前提ですが、オアシス-Oasis Management様は会社を良くして、企業価値を上げようとしていただいている訳です。その点では本音で心から感謝しております。私(=GMOインターネットグループ株式会社代表取締役会長兼社長・グループ代表熊谷正寿)はGMOインターネットグループの最大株主ですから、株の価値を上げようとされている方は敵でなく味方です。今回の株主提案に関し、経営陣とオアシス-Oasis Management様が対立しているように感じている株主様もおられると思いますが、私はまったく違うと感じています。
ただ、オアシス-Oasis Management様からいただいているご提案内容の論拠に、勘違いや事実誤認、もしくはオアシス-Oasis Management様の推測がございます。このスライドで、大きな相違点の解消ができればと願っています。まず始めに、オアシス-Oasis Management様ご提案の前提・目的が「持続的な成長を実現することができるガバナンス体制への変革を目的とする」とございます。
果たして、私たちGMOインターネットグループは、持続的な成長をしていないのでしょうか。
これは過去10年間の私どもの売上高と営業利益の推移グラフです。ご覧いただいている通り、皆さまにご投資いただいているGMOインターネットグループは、現在のガバナンス、即ち監督と執行体制で、この変化の激しいインターネット業界の中で生き残り、持続的に成長しており、10期連続増収増益を果たしてまいりました。
こちらは、2017年9月に発表された東洋経済さんの「連続増益ランキング」のデータになります。ご覧の通り、私たちGMOインターネットグループは27位です。
27位というのは、全上場企業の1%に入っているということです。これは昨年のデータですから、10年連続になった現在はさらにランクを上げているかもしれません。上位1%に入る企業が「持続的な成長を実現することができるガバナンス体制への変革」という名目で、現在のガバナンス、即ち経営の体制を変えるべきでしょうか?私は変えるべきではないと思っています。繰り返しになりますが、株主提案に賛同すれば「持続的な成長を実現することができる」とされていましたが、私たちは既にそれを実現している企業なのです。
結論、この1点だけでオアシス-Oasis Management様の7、8、9号議案のベースになっているガバナンス、即ち監督と執行の体制は変えるべきではないと思っています。
さらに、誤解や事実誤認がいくつかございますので、補足でご説明をさせてください。
さて、オアシス-Oasis Management様からは、「トップダウンの経営により、当社取締役会の監督機能の実効性がない」とのご指摘がありました。
私たちGMOインターネットグループの取締役会は、私のトップダウン経営により実効的でないのでしょうか?
GMOインターネットグループには、大きな夢を全員で共有しながら、高い目標を達成するための仕組みがあります。その1つに、今から20年前、1998年に作った55ヵ年計画という超長期計画があります。これは業績予想などと完全にリンクするものではなく、作成してから55年後に目指したい売上、利益、パートナー数(従業員数)、グループ会社の数などが書かれています。現状は若干の差異があるものの、この数字をグループ全体で追いかけています。これを20年以上継続し、全員で共有し、グループ経営を行っています。この数字は、確かにオアシス-Oasis Management様のおっしゃる通りトップダウンの数字です。
一方、昨年まで皆さまに開示しておりました業績予想(2018年より業績予想は非開示となります)は、年に1回グループの幹部全員が合宿を行い、ボトムアップで決めております。参加幹部の90%以上が賛同することを、「純度90」とグループ用語で呼んでいます。予算合宿で、各社から上がってきた予算を純度90で審議、決定し、皆さまに毎年開示を行ってきました。この合宿で決定した予算は、各幹部の自主性に任せて達成されています。
例えば、今なら仮想通貨のマイニング(採掘)事業など、一部の新規事業においては私が確かにトップダウンで主導しています。それ以外の既存事業においては、予算策定から日々の運営までをすべてボトムアップで行っているのがGMOインターネットグループなんです。当社グループには、私がいちいちトップダウンで指示をしなくても業績達成ができる仕組みがあります。この仕組みこそ私たちの強みでもあります。ご説明するまでもなく、インターネット産業はもの凄いスピードで広がり、変化しています。スピードの速いインターネット産業で迅速な意思決定を行い、利益を創出し、成長を続ける為には、自走させる仕組みを作ることが最も大切なんです。大きなピラミッドでトップダウンの決裁を待っていたら、すべての意思決定が私のところに集まっていたら、この業界では勝っていけないのです。
これは当社のガバナンス体制になります。2017年3月31日に経済産業省が公表した「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務方針」などの、いわゆるガバナンスの教科書には、監督と執行の分離、即ち執行部門の責任者が取締役になるのは望ましくないと書かれています。しかしながら、変化の激しいインターネット業界において「勝つ」ためには、その環境の変化に応じて猛スピードで意思決定を行い、猛スピードで組織として自走しないと勝てないと考えています。
当社グループは上場9社、連結104社からなるグループ経営を行っています。各分野のプロフェッショナルが集まり、権限を分散して競合よりすばやく意思決定し、実行に移しています。仮に監督と執行機能を分離した場合、社外取締役だけでこの速い業界の迅速な意思決定ができるでしょうか。変化の激しいインターネット産業と当社グループの強み、この両方を知り尽くしている社外取締役は、残念ながら私にはどうしてもイメージが沸きません。教科書に書いてあることが、すべての企業に当てはまるとは限りません。実績の出ている組織や仕組みを、「教科書と違う」ということだけで否定し、壊すことは避けなければならないと強く思っています。企業の成長に伴い、役員人事や役員の報酬については必ず起こる論点ですが、私の恣意性を排除することにより、全員が集中してフェアな状態で、私の顔色を伺うことなく、経営にあたる仕組みを発明しています。取締役の選任と報酬については、いわゆる教科書に書いてある「指名委員会」や「報酬委員会」によって決められてはいないものの、社内では教科書以上に非常に透明性の高い仕組みによって運営されております。
私を含めた当社の取締役全員に対して、グループ会社の全取締役幹部、本社の部室長以上の合計140名による360度評価を実施しています。取締役の執行状況の評価、人間性の評価、次年度の取締役として推薦するかしないのか、これを140名が匿名でアンケートを行っています。良い、悪いが辛辣に書かれた評価のすべては取締役本人へのフィードバックと共に評価者全員に開示し、本人の成長に役立てられるようになっています。
役員報酬に関しては、誰一人文句の出ない仕組みを発明しています。こういった仕組みを持っているのは、おそらく世界でも数少ないと思います。ほとんどの会社で、社長や創業者は毎年役員から報酬の交渉を受けるのではないでしょうか。私はこの10年以上、役員と報酬の交渉をしたことは一度もありません。具体的にどういう仕組みなのかご説明します。
まず、140名の幹部全員の中から、「報酬・仕組みを決めたい人」の立候補を毎年募ります。これにより、「報酬や仕組みへの不満」が払拭されます。さらに、「後で文句を言う人」を残った方の中から募ります。こうして、仕組みを作りたい人と後で文句を言う人とで、報酬を考えるグループを作ります。すると、残りのメンバーは立候補者にすべて任せる、ということになります。このグループで仕組みをブラッシュしながら、残りのメンバーに都度開示して意見を集め、純度90の状態を作り、それを毎年の報酬の仕組みにしています。もちろん、この仕組みを作る中に私は入っておらず、一切意見はしません。この仕組みは様々な項目がポイント制になっており、各役員に自動的にポイントがついて、自動的に報酬が決まります。しかも、その仕組みも、それぞれの役員の目標も、すべての報酬も、グループの5,300名全員が入社初日から社内ポータルで確認することができます。私の過去の報酬も、ここにいる役員の過去の報酬もすべて開示しています。これ以上、透明性の高い報酬の仕組みはないのではないかと思います。オアシス-Oasis Management様からは、「株主への報酬の仕組みの開示」「外部への開示」をリクエストいただいていますが、これは企業秘密であり、私どもの競争力です。しかしながら、外部に開示するより、よほどガラス張りだと自負しています。
さて、オアシス-Oasis Management様のご提案されている3号議案ですが、全上場企業のうち指名委員会を設置している会社は73社とまだまだ導入実績が多くありません。そして先程ご説明した連続増益の表にある会社で指名委員会を設置している会社はゼロです。指名委員会や報酬委員会など、教科書に書いてあることをやらなくても、仕組みを自分たちで開発し、それ以上に透明性の高い仕組みを導入することは可能なんです。
補足の説明を長々とさせていただきましたが、トップダウンの経営という前提も誤解ですし、その他ご説明させていただいた理由からも、やはり7、8、9号議案は私どもには不必要であり、むしろ無い方が良いという結論です。
さて、次にオアシス-Oasis Management様のご提案となる10号議案、報酬について私どもの考えを簡単にご説明させていただきます。まずは、報酬のベースになる昨年の業績です。
オアシス-Oasis Management様からは、「2017年度の通期業績において、営業利益・経常利益が業績予想に対して未達、よって役員報酬の減額」というご提案をいただいています。
2017年の業績はご覧の通りです。営業利益と経常利益は、オアシス-Oasis Management様のご指摘通り、第1四半期の金融事業の遅れを取り戻せず若干の未達となりました。しかしながら、株主の皆さまへの配当の原資となる最終利益は達成をしています。
最終利益のうち、33%以上を配当、残りの17%は自社株買いをして、さらに自社株買いをした株式は毎年償却をしています。結果、総還元性向は50%になります。最終利益のうち半分を皆さまにお返ししています。2017年度も、公約した配当は満額お支払いさせていただきました。
私たちはお客さま、株主の皆様、ここにいる仲間たち、関わる全てのステークホルダーの笑顔を願っています。No.1の商品・サービスを提供して、お客さまに笑顔になっていただく。そのお客さまの笑顔を見て、サービスを提供する仲間たちも誇りが持て、そして笑顔になる。このお客さまと我々仲間たちの笑顔を継続が、結果として利益となります。そしてその利益から株主の皆さまに還元させていただいて、そして笑顔になっていただく。この3者の笑顔の循環こそ、この実現こそが、役員の務めだと思っています。
利益の「り」は=理念の「り」です。この3つの笑顔を作って、結果として役員は報酬をいただくということが役員の理念です。きちんと配当をして、皆さまに笑顔になっていただいたはずなのに、役員報酬半減という議案は、私どもの理念に反しています。以上の理由で、オアシス-Oasis Management様の10号議案には反対です。
最後に、オアシス-Oasis Management様の5、6号議案に関わる買収防衛策についてご説明いたします。この買収防衛策を2006年に導入した理由は、経営陣としての保身ではありません。私どもが日本を代表するインターネットインフラ事業者として、お客さまのために守るべき事業、サービスがあり、我々の企業の長期的成長を継続するためにある施策です。
皆さまは毎日のように、スマートフォンやパソコンでインターネット検索をされていると思います。Googleさんの検索結果で表示される日本のWebサイトのうち、90%のドメインが私ども経由で登録いただいています。そして、皆さまがご覧になっているWebサイトの2つに1つ、50%以上を、私どものデータセンターでお預かりしています。私どもは、日本のインターネットの裏方を支えている企業なんです。1社ではなく、グループ全体でお支えしています。
私どもは、建設的な買収提案を否定するつもりはありません。そして、敵対的な買収であっても、そのすべてを否定するわけではありません。ただし、日本のインターネットを支えている企業価値を毀損するような濫用的な買収、および企業価値最大化につながらない買収は否定すべきだと考えます。何事においても、お客さま、我々の仲間、株主様、このステークホルダー全体の利益を鑑み、3つの利益のバランスを考えて判断をしています。このような事案が起こった場合の手続きを、濫用的な買収が起こった場合の手続きと内容について、予め決めておくのは、決して悪いことではないと考えています。
オアシス-Oasis Management様は、「GMOインターネットグループはグループ上場企業の合算した時価総額より企業価値が低い」とおっしゃっています。つまり、GMOインターネットグループ本体を単純に敵対的買収を行い、グループの解体、株式を売ることで、想定上では買収額以上のキャッシュが残るわけです当社のように事業持株会社の場合は、様々な事業への投資を行っているため、単純計算が合いません。足し算で本体の合計金額になるとは限らないんです。私たちはグループ全体で一つの動きをしている部分や助け合っている部分があるため、敵対的買収によってグループを解体しようとする人が現れてしまうと、日本のインターネットインフラの大半が停止してしまう可能性すらあります。そのような敵対的買収は、拒否せざるを得ません。
短期的なお金目的のM&Aを追求する株主が出現し、結果的に、お客さまと我々のサービスを守れずにグループの価値を毀損することを敵対的な買収と考えています。そのような可能性に対し、事業とお客さま、株主様、あるいは仲間たちを守るための危機管理の一環として導入しているのが、この仕組みであり、その判断には、事業・業務への精緻な理解と、M&Aの専門的知識が必要です。
よって、私どもの取締役会及び特別委員の存在はプラスだと考えています。また、オアシス-Oasis Management様の買収防衛策廃止関連と、ガバナンス強化関連の議案においてのご主張には、当社の社外役員や特別委員が「長く務めている」ので、馴れ合いになっているのではないか、牽制が効かないのではないか、というご指摘が多数ございました。これは、社外役員の方や特別委員の方に大変失礼な話だと思いました。期間で判断せずに、人格やご経験、ご見識で総合判断し、お願いしていることを改めて強調させていただきます。社外役員の在任期間については、イギリスやフランスのように期間を設けている国もございます。一方、アメリカのように期間を設けていない国もございます。これには、社外役員と経営陣の一体化は懸念される一方で、せっかく知見が深まった社外取締役を期限という簡単な縛りだけで変えて良いのかという議論が世の中に存在するからです。結論、社外役員の在任期間やコーポレートガバナンスそのものには、まだ世界的にはまだ正解は無いと感じています。長くなりましたが、以上の理由でオアシス-Oasis Management様の5号、6号議案には取締会として反対しております。
最後に、私たちがコーポレートガバナンスにおいて一番大切だと思っていることをお話しさせてください。
コーポレートガバナンス、即ち監督と執行の仕組みは、企業にとって本当に大切です。しかし、最も大切なのは、経営陣の人柄だと思っています。愛と感謝。お客さま、仲間たち、株主の皆さま、このステークホルダー全体を幸せにし、笑顔にしようする気持ち。それを考えることができる資質が経営陣にとって一番大切です。本日の取締役候補は、このような視点で上程をさせていただいています。
2. その他ご指摘事項に対する考え
その他、オアシス-Oasis Management様からウェブサイトや、当社株主向けに送付された書面等を通じて指摘いただいた内容に、事実誤認や誤解がある点について、以下のとおり回答いたします。